◎統計セミナー

 

 

 

「既存データを活動に生かす  宮崎大学医学部看護学科 青石恵子准教授

 

平成28519日(木)

 

 

母集団のすべてのデータを収集することは、時間的にも費用的にも困難な場合がある。このようなときには既存のデータを活用し、母集団から無作為に標本を抽出し、これらから母集団を推測するという方法がある。

 

標本ではなく母集団のデータを厚生労働省統計調査(人口動態調査、患者調査など)、総務省統計局(統計で見る都道府県のすがた)、宮崎県総合政策部統計調査課(指標で見る宮崎県)など官公庁が発表しているデータのみを使って分析した研究を紹介する。テーマは「九州地区からみた宮崎県の自殺の傾向と地域特性に応じた自殺対策の検討」であり、九州地区は気分障害による入院数が多く、所得が少ないという特徴があった。加えて宮崎県が高自殺率である要因として、疾病の早期治療に至っていないこと、経済的に不安定であること、周囲からのサポートが受け難い環境にあることが既存データの解析から考えられた。

 

 

<参加者の声>

 

 

・担当管内から上がってくるデータから各市町村の傾向を「なんとなく」しか把握できていない。

 

・視覚化し、傾向をしっかりつかんで保健活動がしたい。

 

・業務の中でたくさんのデータに出会うので、そのデータを「みえる化」して市町村へ還元できるようになりたい。

 

・現在、人手不足、能力不足、仕事がたまる、片付かない・・・といった状況でなんとか改善できないものかと考えています。

 

・課題と目的を持った健康施策に少しでも自信をもって取り組めるようになりたいです。

 

・セミナーに参加することで、気軽に相談できる仲間が増えるとよいです。

 

・既存のデータをどのように活かすか自分の中でしっかり考えたいと思います。

 

・まだ統計の使い方がわかりにくいので学んでいきたい。                                   

 

・皆さんの意見や発表を聞き、深く考えさせられることが多かった。自殺に関する関係者の悲しみの深さを考える機会になった。回復力を身に付ける大切さがよく理解でした。                               

 

・相関を見るのはおもしろいと改めて思った。

 

・とても興味深いと思った。

 

・現役で保健師の仕事や統計を使った業務を行っている方の意見などを聞いて、保健師に求められる能力やスキルを具体的にイメージすることができました。実習に向けて、聞き取り調査票などの作成を行っていますが、データを収集することに加えて、それをどう活かすかも重要だとわかりました。

 

・今回学生という立場で参加してみると、事業をしていく中で統計の分析に時間をとられて住民の方との時間がないということなどが聞けて新鮮だった。

 

・データが大量にある中でどのようなデータを解析するか、目的をもってゴールを見つめながら進むというのはいいなと思った。

 

・とても勉強になりました。

 

・まだ学生ですが、ここで学んだことを現場に出た時も生かせるようになりたいと思います。

 

・苦手意識を持たず学んでいけたらいいなと思います。

「日頃の気づきをデータで確認しよう!①」

 

 宮崎県立看護大学 松本憲子准教授

 

平成28616日(木)

 

セミナーの参加者は、医療・保健・福祉の業務に従事しています。そこで、より実践的に日頃の業務にセミナーを活かしていただけることを目的として、参加者の方々の日頃の業務で感じていることをグループに分かれて共有してもらいました。そして、業務の中で感じていることが実際に既存のデータとして示されているものはないのかを確認しました。その具体事例として、宮崎県の歯科保健における日頃の気づきのひとつとして、『フッ素塗布やフッ素洗口を実施している自治体の子どもの一人平均むし歯数・むし歯有病率は低いのではないだろうか?』という事柄について既存のデータで「がってん!」にすることはできるのか?また出来ないのであれば、更に必要な情報は何か?を考えていきました。このプロセスを通して、参加者が日常業務の中で感じている疑問を「がってん!」するために必要なことを問題意識の共通するグループに分かれ考えていきました。グループとしては、「10代の肥満」、「産後うつ」「特定健診の受診率向上」「宮崎県のSTD」の4つのグループができ、それぞれのグループでの疑問や気づきに関する既存のデータを持ち寄ることを課題として1回目を終了しました。

 

 

「日頃の気づきをデータで確認しよう!②」

 

宮崎県立看護大学 松本憲子准教授

 

平成28712日(木)

 

2回の日頃の気づきをデータで確認することを課題として迎えた第3回目では、まず、具体事例として、宮崎県の歯科保健における気づき『フッ素塗布を実施している自治体の一人平均むし歯数やむし歯有病率は低いのではないか』と事項について、各自治体のフッ素洗口実施状況・フッ素塗布状況と3歳児健康診査のDMFTについてT検定にて確認しました。すると有意差はなく、『自治体が行っているフッ素塗布だけでは、幼児のむし歯を完全に予防できるとは言えない。フッ素塗布の効果は、年に4回以上(3か月に1回)実施することが必要!』だということが分かりました。そこで、日頃の疑問を解決するには、既存のデータと新たに調査を行うことの必要性を確認し合いました。その後、「10代の肥満」、「産後うつ」「特定健診の受診率向上」「宮崎県のSTD」の4つのグループから、①性感染症(HIV・梅毒)の現状、②.産後うつの現状、③10代の肥満率が高いのはなぜか?、④特定健診受診率が低いのはなぜか?という日頃の疑問や気づきについて、グループ別に集めたデータを参加者皆で共有し、グループメンバーを超えてデータの読み取りをすることで、多くの気づきを得ることが出来ました。

 

 

【 参加者の感想 】

 

〇面白かったです。今後の展開が楽しみです。

 

〇宮崎県内の状況をまだよく把握できていなかったので、調査するきっかけになりました。

 

〇二回連続の講座でしたが、前回よりも今回の方が内容を理解しやすく、学びが多かったです。もっと気軽に意見が出せるような雰囲気作りができたらと思いました。

 

〇1つの事例をじっくりと考えていくということは、色々な意見が参考になるのでとても良い時間となりました。市町村の保健師にももっと参加してほしいと思いました。

 

このセミナーに参加した学生さんたちが、宮崎県内各地でこれから頑張ってくれると思うと嬉しいですね。来月が楽しみです。

 

〇調査票、難しいですが何か考えてきます。

 

統計処理も見える化など、お題が難しいですね。

 

その他啓発方法など検討できれば良いかと思います。

 

〇とてもよかった。学生さんが多く、市町村保健師が少なかったのが残念でした。

 

良い意見、アイデアをどんどん出してください。

 

〇学生さんも含めて、にぎにぎしく話し合えて嬉しかった。

 

研究に対する各班の意見、とても参考になり今後の展開がますます楽しみです。

 

名前は知っていても、顔を合わせて・・・人が知れたのでよかった。とても素晴らしかった。

 

市町村の参加がもっとあるといいなあと思いました。

 

〇初めての参加でしたが、量の研究を初歩から疑問から取り上げていく、経過、段階を学ぶことができてとても勉強になりました。

 

宮崎の産後うつの現状を調べられたらいいなと思います。

 

〇とても勉強になりました。これからの活動が楽しみです。

 

〇今日は初めて参加させて頂きました。実は松本先生から保健師過程のグループへの声掛けがなかったら参加する予定はありませんでした。

 

しかし、参加できてすごくおもしろくて、すごい職種の方やいろんな場所の保健師さんがたくさん集まっていてすごい場にいれたことに感激しました。

 

HIVにも、10代肥満にも、産後うつにも興味があります。何か調査に出るときにはぜひ参加したいです。

 

来月は試験前で帰省していて参加できなくて残念ですが、次参加できる時は参加したいです。(学生)

 

〇とても勉強になりました。まだまだ宮崎県には様々な課題があって、行政側も把握しきれていないようなことも多くあるとわかりました。

 

ひむかヘルスリサーチセミナーで様々な研究を行って、対策の必要性がわかれば、それを県、市が実際に施策化して行動することにつながれば素晴らしいと思いました。(学生)

 

様々な知識もついたし、様々な視点から物事を見て、少しの疑問・気になることも掘り下げていくことが大切だと学びました。(学生)

 

〇宮崎県の公衆衛生に関する、保健事業内での課題や健康課題について、どうすればよりよい調査ができるのか、どのような調査が必要なのかなど、実際に現場で働いていらっしゃる方々と検討出来てとても勉強になりました。(学生)

 

〇臨Ⅲで測定したデータをどう処理したらよいかわからず困った経験があったが、データを焦点化してみていけばよいことがわかった。

 

既存のデータを処理していくには、そのデータがどういう特性を持っているのかも理解しないといけないことがわかった。

 

自分が知らないだけで宮崎にはまだまだ問題や取り組みが追いついてないことがあるのだと学んだ。(学生)

 

〇現役で活躍されている保健師さんたちの意見交換をみて、全く自分では気づけなかったことなどがたくさん出てきて、色々な視点を知ることができよかった。(学生)

 

〇宮崎を対象として、更なる情報が欲しいことや明確にしたい問題など、学内だけでの学びでは学びきれないことを吸収することができたと思いました。

 

現場で働いている方の声を聞くことがとても刺激になりよかったです。(学生)

 

〇とてもよかった。

 

データから有意差があるとは言えなかったとき、どんな調査を加えたら、言いたいことを統計データから言えるのか、グループワークをしてみんなで考えた時に私一人では思い浮かばなかったことが聞けた。いろんな方法を考えて、示したいことを示せるように導いていくのは、難しいけどとてもやりがいがあるだろうなと思った。(学生)

 

〇難しいことばかりでついていくのに必死でしたが、統計について学ぶことができてよかったです。その母数によって大きく変動することや様々な要因が重なって起きているため、研究の難しさを感じることができました。しかしこのような場でみなさんで共有し解決することができてよいと思いました。(学生)

 

〇今回は2回目の参加でした。

 

統計で結論を出すためにはさまざまな資料が必要であるということがわかりました。

 

ひとつの結論を導くために、受診率や自治体の規範、全国の情報や事業のやり方などたくさんの視点があっておもしろかったです。

 

しかし、江藤先生の講和の時間があまりなかったのが少し残念でした。次回参加するときは期待しています。(学生)

 

〇皆さんのお話をきいていて大事だと感じたのは、自分の方向性をきちんと決め意見を持つことです。とにかくどんどん意見をだすのでそこを見習いたいと思いました。

 

どんなデータをとれば、またどんな傾向があるか、みんなに説得力を持たせながら伝えるために強調の仕方、パワーポイントなどいろんな工夫がみられた。(学生)

 

〇1年生で、初参加でした。

 

知識が足らず、理解が難しい部分もありましたが、話し合いなどで先生方、先輩方に説明をしていただきなんとかついていけました。

 

保健師の研究の面も見ることができて、このようなこともするのだなと新鮮で、知れてよかったです。より一層保健師への思いが増しました。

 

足手まといかもしれませんがまた参加させて頂きたいです。忙しい中ありがとうございました。(学生)

 

〇「統計的」に考えるという言葉の意味が分からなかったとき、日高先生からわかりやすく教えて頂けたのでとてもよかったです。データを扱う上では「統計的」に考えるということは重大だと思うので基本が聞けて良かったです。(学生)

 

〇参加してよかった。

 

わからない用語も出てきて難しいと思う部分もあったが知ることができてよかった。

 

様々な問題について対策しようとする一生懸命さに、私ももっと学んでいきたいと思った。(学生)

 

〇参加してみて、宮崎県の健康保険問題について情報を得ることができてよかった。わからない用語が結構あったので、これから学んでいきたいと思った。(学生)

 

〇とてもよかった。住民がよりよく生活していくためにできることは視点をもつことでたくさんあるのだなと思った。

 

フッ素塗布について今後どのようなデータの取り方の問題や不足しているデータなどたくさん見つかるのだと思った。

 

色々な考え方があって、「確かにな」と思うことも多くて考えることがとても楽しかった。(学生)

 

 

<参加者の感想>

 

いつもは市町村保健師との関わりが多く、それが悩みだねーと終わってしまうのですが今回のセミナーで研究の取り組みが聞けたり、いろいろな考え方を知ることができ、なんだか自分の仕事を前向きにやれるような気がしてきました。今後も皆さんと意見交換などしながら、住民さんと自分の幸福度を高めたいと思います。

 

 

 

○今回初めて参加しましたが、いろいろな視点から今知りたい話(検診受診率、思春期肥満)今後役立ちそうな話題(産後うつ、性感染症)が聞けてよかったです。特に調査票については、関係性と結果のイメージを持って調査表を作成するなど、なるほど!と思うことがたくさんありました。統計とか解析など本当に苦手なのですが、今日は面白かったです。

 

○本日は4つの研究の話を聞き、皆がフリーに発表した中に考えるべき重要なことがたくさんあった。各班で研究を企画するのに参考になること考える。研究の大変さがつくづく思い知らされた。自分が主になった研究がまだないので、このセミナーで学習したことを今後何らかの形でやってみたい。小さなものでも良いので…と考えたところでした。

 

○今日は冷房が入っていてゆっくり聞けました。江藤先生の話は最初に15分ぐらい導入でするとディスカッションで時間が足りなくなるのがなくなると思います。(最近時間がなくなっているので…)

 

○既存のデータをどう読み解くか、何が問題となっているのか、そこから何を研究していくのか、色々な視点で見ていくことがとても大切であると言うことを実感した時間でした。現場でも常になぜ?を意識して活動していきたいと思います。

 

○まずアウトラインとその書き方を一緒に学べたのでよかったです。またそれぞれの発表を聞いて、ひとつのデータからいろんな解釈ができるということがわかりました。様々な意見が聞けてとても勉強になりました。産後うつに関しては宮崎ではまだまだ未開拓なところも多いので実際に研究することの意義があると感じました。結果が楽しみなようで大変な研究であると感じています。

 

4つのテーマの背景、意義がよくわかり宮崎県の現状の把握ができました。引き続き学内の実施を希望します。

 

○一つ一つのテーマでは、違った角度から見ることができ1つは統計を見るときに気をつけなければ誤った見方になると改めて実感した。また1つの課題に対してアプローチの仕方は1つではなく実現可能性も考えながら広い考えをまずは持って焦点化していくことが大切だと思った。

 

○内容が面白いと聞いていましたので参加できてよかったです。思い出しバイヤスなど聞いたことがない言葉もありいろいろ教えてもらいたいと思います。統計をやってみようと言う気になりました。

 

○話を聞いていてワクワクしました。現地に対して大きな壁を感じていましたが、自由な雰囲気だったので参加しやすかったです。時間もあっという間に過ぎていました。統計に関する研究をしたことがないので、これから学んでいきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 

     

「研究のFINER~優れた研究の条件~」

 

 宮崎県立看護大学教授 中尾裕之教授

 

平成281020日(木)

 

前回まで,各グループの研究アウトラインが整理され,各テーマの研究計画の骨組みが見えてきたところです。今回は,優れた研究の条件として,研究のFINERについて確認しました。研究のFINERとは,Feasible(実施可能性),Interesting(科学的興味深さ),Novel(新規性),Ethical(倫理性),Relevant(必要性)の5つです。これらの5つの条件について,各グループの研究がどの程度満たされているか,自分たちで批判的に吟味することで,問題点を明らかにし,研究計画により具体性を持たせることができました。

 

 

<参加者アンケート>

 

◯研究が少しずつ進んできていて、楽しいです。

 

〇次回、今後研究計画書の書き方、解析方法についての講義が聞きたいです。

 

〇統計についてはFINERをそれぞれ分けて考えることで課題、それの対策等漏れのない研究にしていくために重要だと感じたところです。

 

〇研究の条件についてディスカッションすることができ、具体的な研究の方向性を定めることができた。

 

〇他のグループの発表や全体での意見交換を行うことができ、研究テーマによる課題や問題点を共有することができた。

 

〇研究の考え方はとても勉強になります。

 

〇特定健康診査の受診率についてのグループワークは、年齢が40から50代の人のデータが少ないことが問題となっていて、そのコミュニティを探すのが難しかった。健康に興味を持っていない人にアンケートを取る(答えてもらう)ことが大切だと思うので、葉書で郵送するよりもアンケートを取るために足を運ぶ方が良いのではないかと思った。保険によって受診率が大きく異なることに驚いた。

 

〇グループディスカッション時に特定健康診査がどういうものか、現場がどうなっているかを知ることができた。そしてそこからどういうアプローチで調べたいことを調査していくのかを考えて実施案を練っていくという過程を考えることができたのでもっと深く知っていきたいと思った。

 

〇サンプルサイズの出し方を講義で一度実施して欲しいです。

 

〇保健指導や協議会のような時でも、一般的な事例を上げるようにしています。後は自分事に捉えてもらえるようなデータの提示等が大切だと思いました。

「倫理申請書の書き方のコツ」  宮崎県立看護大学教授  中尾裕之教授

 

平成281117日(木)

 

研究を進めていく中で,研究計画を立てた後にしなければならないことの1つに,倫理審査を受けるということがあります。今回は,研究倫理審査申請書に記入する内容について整理し,申請書の具体例を1つ紹介しました。「書き方のコツ」というほど,申請書を書いてきたわけではありませんし,その道の専門家でもありませんので,主に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」について調べた内容を紹介し,それについて一緒に勉強していくという形でお話しました。

 

 

<参加者の感想>

 

○研究に関して知らないことばかりなので、このセミナーでの学びが大きいです。来年以降も是非このセミナーを続けてほしいです。

 

○普段は目にしない部分です。勉強になりました。

 

○倫理申請書の書き方のポイントがわかりやすかった。取り掛かるまで敷居が高かったのですが、三段くらい下がりました。ありがとうございました。

 

○本日、第一・第二の講座の内容がとても濃く、興味深く参加させて頂きました。2回に1回はこのような企画もよいと思います。ありがとうございました。

 

○これからの内容として、統計分析を学びたいと思っています。統計はとってもとっても苦手ですが、教えて頂けたらありがたいです。

 

○倫理申請書の書き方も具体的でわかりやすかったです。ありがとうございました。

 

○より具体的な方法論を学ぶことができてよかったです。今回学んだことを活かして、次の倫理審査に向けて準備していきたいと思います。

 

○普段ガイダンスを読むことはなかなかしませんが、ポイントをおさえた講義で大変良かったです。是非今後の参考にさせて頂きたいと思いました。本当に、ありがとうございました。

「調査票の作成」       

 

宮崎県立看護大学教授  中尾裕之教授

 

                       平成29119日(木)

 

4つのグループの各々のテーマ「10代の肥満」「産後うつ」「特定健診受診率の向上」「宮崎県のSTD」について,研究計画がある程度まとまってきたところですので,今回は調査票のたたき台の作成,そして,たたき台をさらに磨き上げていく作業を各グループで行いました。まずは,調査の目的と作業仮説について整理しておくこと,そして,先行研究や参考となる質問項目がないか調べることについて確認しました。実際の作業では,「理解のしやすさ」「記入のしやすさ」「集計・解析のしやすさ」の3つの点について注意しながら進めました。

「調査票回収後のデータ整理」   

 

 宮崎県立看護大学教授  中尾裕之教授

 

平成29216日(木)

 

調査票を作成し,アンケートを回収して,いよいよデータ解析となるわけですが,その間には,大変な仕事が残っています。調査票を回収した後のデータ整理です。実は,この段階の作業の方が解析よりも時間と手間がかかります。データ整理には,入力規則の決定(コーディング),データの入力,データの論理エラーチェック,統計解析ソフト用のファイル作成のためのエクセルファイルの編集等がありますが,今回は,データのコーディングと論理エラーのチェックについて,実際の調査票を具体例としながらお話しました。

 

 

【 参加者の感想 】

 

○前半はデータ整理について学びました。

 

これから学習が進むにつれ、アンケートをとったりすることも増えてくると思うので今日学んだことを活かして答える側にも集計する側にも優しい調査ができればいいなと思いました。

 

○中尾先生のデータ処理についての講義はわかりやすく、今後に是非活かしていきたいと思いました。

 

○調査回収後のデータ整理は、今まさにアンケートをとり集計というところなので、今回きいたことを活かして入力していきたいです。疑問に思うことがあれば聞けるんだ、という安心感をもてました。

 

次年度以降のこの講義、毎回参加は難しいと思いますが、できるだけ参加したいです。出張セミナーも期待しています。ありがとうございました。

 

○質問紙の整理の仕方を学ぶことができ、基本的なところから教えて頂いたので実践をしていきたいと思います。実際にアンケート調査を行ったときはアドバイスをお願いします。

 

○考える形式の講義・指導だと参加している感があってよいかと思います。

 

遠方からの参加を増やすのは難しいですね。医師会ならサテライト方式で受講するなどやっていますが、他の会場の雰囲気はわからないのでそれもなかなかかもしれません。

 

○アンケートの調査項目まで作成したので、引き続き統計的アドバイスを頂きたい。

 

○質問紙の作成のポイント、データ入力のポイントがイメージできてよかったです。IF(COUNT:F)を使ってみたいと思った。

 

来年度は、統計に関する研究をやりたいと思っています。学びを活かせるようがんばりたいと思います。

 

○今日は、調査した後のデータ整理について学び、統計や情報で学んだことをあらためて思い返し、頭の中で整理できたように思う。どのようなことを注意すべきか、工夫すべきかわかり、もし自分がデータを集めたら・・・という仮説の内で考えていくことができた。

 

 

◎保健支援セミナー

 

 

 

「魅力的な健康支援を導く◯◯」    宮崎県立看護大学 江藤敏治教授

 

                       平成28616日(木)

 

~講義録~

 

自分がもし保健指導するとして「こういう人はやっかいだよね」という人はどんな方でしょうか。ちょっとお隣の方と話してみてください。

 

2人組で話す〜

 

いろんな人がいますよね。たとえば危機感がない、開き直る人、自分勝手、早く終わらせたい、怒る、無反応…こういう方にも伝わる健康支援を目指すにはどうしたらいいでしょう。その人の人生に寄り添うような支援が必要ですね。ヘルスビリーフモデル、その人の想いに沿うような・・・変容ステージモデルを使ったり、保健指導モデルというのはあるが、理論通りにやってもなかなかな場合があります。自分の特徴を知って取り入れるのは有効ですがそのままは使えません。

 

では、わたしにとっての「魅力的な健康支援を導く◯◯」その◯◯を考えてもらってよいですか?もちろん2文字じゃなくてもいいですよ。ちょっと書き出してみてください。

 

「クライアントの理想」、「楽しいサポーター」、「熱意」、「雰囲気」、「コミュニケーション力」、「楽しそうな内容」、「個人にあわせた生活指導」、「理論」、「ゆるし」・・・・いいですね!

 

僕が考えたのは人間力」、「技術」、「知識」、「経験」、はもちろんですが愛」、「自己肯定」がとても大切だということ。「自分自身を認めること」ですね。これはこちら側にもとても必要です。支援者側が自分自身を自己肯定していないと、相手のできていないところばかりに目が行きがちです。自己肯定がしっかりしていると、相手の想いを引き上げることができます。人は、自分を認めてくれている人の話は聴くことができるんです。ちょっと無理なことを言われてもがんばろうと思ってしまいます。しっかりとベースがあれば、みなさんの想いは伝わります。

 

ちなみに自己肯定はどうやって高まるか。内観療法というのがあります。要するに自分自身を振り返るわけですが、幼い頃から今に至るまでどういう人に助けてもらって、どういう風に人と繋がって信頼関係の元に今の自分があるかということをみていくものです。多分、医療関係者は知っていた方がいいかもしれません。いかに自分に多くの人が関わってくれて今の自分を支えてもらったかということに気がつきます。自己肯定が弱いとか、自分を認められない時にこれを行うと大きな気づきがあります。

 

今度やってみましょうね。ワークしてみましょう。弾けるような想いが出てくるのではないかと思います。クライアントの方を導くためにも我々に自己肯定は大切です。色々体験してみましょう。今日もお疲れ様でした。ありがとうございました。

 

   

「多人数を対象とした保健支援講座の展開法」  

 

宮崎県立看護大学教授 江藤敏治

 

平成281020日(木)

 

~講義録~

 

10年前、ある大学の学生の30パーセントの人がタバコを吸っていました。

 

講義をうけたら禁煙できるからと言うことで来た人もいるし、絶対自分は辞めないからやめさせてみろと言う学生もいました。一ケ月経つと半分の人が禁煙を開始、それだけではなく禁煙友人や親などへの支援に入る人が全体の20%75人に及びました。次の週間で8割の人が禁煙を開始週間で、7月禁煙支援開始82パーセント、40パーセントと喫煙者数が減っていきました。

 

 

 

皆さんこの数字を見てどう思われますか。これは特殊なのかあるいは宗教なのか、あるいは純化されたグループなのかということなんですけれども。例えば○○市役所の禁煙支援に入ったときにはですね、禁煙支援に入った9割が禁煙を開始していきます。ある企業に禁煙支援に入った時もそうでした。あながち特別な状況ではなかったように思います。

 

大学の喫煙率が下がった話のポイントは何だと思いますか。どういうことを伝えていけば人は変わっていくものなのでしょうか。自分の親を禁煙させた学生が4年間で2,000人出ました。その背景には知識を持ったこともあります。まず自分ごととして捉える事も大切な要素ですね。

 

 

 

僕はよくアンケートをとります。何故かと言うと既存のデータ(厚労相)を使って伝えてもそうなんだと人事で終わります。そして後についてきます。「でもなかなか難しいよね」と。当事者と当事者以外の認識がどういうものであるかということをお互い理解する必要があります。

 

これは平成19年にとったデータです。タバコを吸っている人67人そのうち、禁煙を始めている14人、禁煙をしたい30人、禁煙したくない人18人。こういったデータをタバコを吸わない人が見たら「あんなにおいしそうに吸っているのに辞めたいと思っているのか」「2人に1人は辞めたいと思っているんだ」と驚きます。一気に身近な話になります。

 

 

 

そして大事なことがあります。それは禁煙を進める上で、タバコをすわない人の価値観が1番ネックになってきたりすることもあります。例えば敷地内禁煙をしようとするときに誰が1番反対するかと言うと吸ってない人なんです。「私タバコを吸わないからあんまり関係ないんだけどそこまでするのは人権違反なんじゃないの。」「かわいそうだわ。あんなに楽しそうにおいしそうに吸ってるのに。」「いや僕は吸わないからどっちでもいいんだけど」なんて声が聞こえてきます。

 

 

 

どちらかというと、タバコを吸う人は諦めています。言われたらシュン・・・、白旗、「そうだよね」と言うような感じです。だから吸わない人の意識というのを浮かび上がらせるということが大切です。ではタバコを吸わない人は関係ないのでしょうか。やはり親、兄弟、周りの人が吸っていれば5割ぐらい吸ってしまうんです。これは本人たちの問題でもあります。受動喫煙というのは本当に大きな問題なんです。

 

 

 

今、卒業論文で受動喫煙のことをテーマに研究しています。アルバイト先のお店が喫煙か禁煙かもしくは分煙かなどで、とても興味深いデータがあります。アルバイト学生のうち、煙が気になるというのは喫煙のところが突出していましたが、「喉が痛くなる、目が痛くなる」というのは、分煙と喫煙一緒なんです。要するにアンケートをしっかりとると、身近なものとして理解することができます。

 

 

 

身近な問題なのだということを、単なるアイスブレイクではなく、「吸い続けたらいつかがんになる」といった遠くの話ではなく、タバコを身近な問題として捉えてもらうことが大切です。例えば学生にアンケートを取るんです。タバコと朝食をみていきます。朝食は大切だというけれどもタバコを吸うと朝ご飯が食べられない。授業への集中度と朝食と言うのは因果関係があります。日常生活と喫煙というのが関係してきます。例えば夕食はコンビニで済ませることも多くなります。食生活の乱れとタバコは関係してくるかもしれない、という自分の日常と考え合わせます。アンケートの項目と言うのは普段の日常に入り込んでいるものであることが大切です。

 

 

 

タバコが良いとか悪いとかという事の前に、「自分がどのように過ごしたいか」「どういう風な自分でありたいのか」と言う形で提案していきます。例えば、タバコとお酒、生活習慣と密接に関わっています。留年率とも関係してきます。それをみて「やっぱりよくないかも」という話になってきます。

 

喫煙者の背景を理解することも大切です。喫煙者にありがちなことで「今更辞めたいと言うのは意志が弱いと思われる」「お前はタバコを吸い続けられないのか」というようなことを言われたりもします。データを見ると「タバコを吸っている7割位の人がやめたいんだ」ということに気が付きます。自分の感覚は間違いじゃないんだなというもの見てもらいます。

 

また、タバコやめたいなと思う人は圧倒的にニコチンパッチのことも知っています。知識を伝えるだけで積極的にやめようと思うことがあります。だから知識も大切です。このデータは、講演前後で身近な人のタバコをやめさせたいと思うかどうかの数字です。タバコを吸っていない人でタバコをやめさせたいと思う人はほんのわずかです。「できればやめさせたいけど無理よね」「いやいや人には強制できない」「自分に関係なければいい」と思っていた人が、講演後、圧倒的に意識が変わります。

 

 

 

禁煙支援に1番大切なのは、知識ももちろんそうだけれども、実は「愛情」なんです。自分が本当に大切だと思っている人に伝えてあげるということです。「禁煙は愛、愛の反対は無関心」受動喫煙を避けようと思えば必然的に無関心ではいられなくなります。人は知識だけでは動きません。「自分がほんとにこの人を守りたい」「この人は大切」という想いがその人に届きます。自分の体に悪いからやめるのはギリギリの人、吸ってて意識が変わるのは、周りの人との関係性によって起きてきます。

 

 

 

自分が周りの人にとってどれだけ大切な存在であるかということに気づく」ことが禁煙を選んでいくきっかけとなります。「自分を大切にしていくこと」が、周りの人にとっても大切なことです。禁煙はそこがメインで、やめる事は最終目的ではないのです。そこがないとタバコを辞めても他のものへ移行して依存は続きます。

 

 

 

集団の保健指導のポイントは、いかにして自分のこととしてとらえてもらえるようになるかということです。行動変容は自己肯定感が鍵となります。「自分をいかに認めることができるか」です。その気持ちがはいった次にプロフェッショナルとしてのメソッドを伝える。ここの落とし込みなしにタバコの害を伝えても耳を塞ぐ一方です。

 

 

 

学生たちの卒業研究は愛情に溢れています。親に対する禁煙支援では、いままで健診さえ受けたことのない人が、あなたをサポートしたいから…と変わっていきます。胸が熱くなりますよね。きっとそういうことではないかと思うのです。

 

 

「心を揺さぶる健康支援のヒント」 宮崎県立看護大学教授 江藤敏治

 

                      平成281117日(木)

 

 

 

健康支援によって人が行動を変容していくうえで重要なポイントがいくつかあります。敢えて、5つ挙げるとすれば、①新しい知見を得た②感動した③なりたい自分を描けた④できそうだなと感じた⑤納得したが挙げられます。

 

まず①新しい知見を得たという時、その知識の中身が「健康」が中心ではなく、「クライアントが価値を置いているもの」に寄り添う中身であることがキーポイントとなります。そのためにもクライアントとの間の信頼関係がとても重要になってきます。

 

次の②「感動した」という項目はいわゆる行動変容モデルには無い部分ですが、極めて重要な要素になります。クライアントに対する「寄り添い」「理解しようとしている姿」をクライアントが実感するときに人は行動を起こしていきます。まさに、皆さんの人間力が必要となるところです。

 

③「なりたい自分を描けた」では、クライアント自身が普段気づいていない本人の価値観を目の前に見えるように表現する力がポイントになります。その価値観の根源には本人の持つ「無償の愛」から湧き上がる想いが中心となることが多いと感じています。

 

④「できそうだなと感じた」については、社会的認知理論にもある自己効力感、自己肯定感が重要なキーワードになります。できそうだと感じる自己効力感を高める4つの要素「自己の成功体験」「代理経験」「言語的説得」「生理的・情動的状態」を意識した支援が大きくクライアントの行動変容に影響を与えます。

 

最後の⑤「納得した」では多くのエビデンスを理解するとともに自分の価値観にも照らし合わせ、自らその行動を選んでいくうえでも重要なキーワードです。

 

 以上の5項目を健康支援の重要5項目としてあげましたが、いずれの項目においても大切なことは理論に加えて支援する皆さんの人間力です。自らを開く力、人の魅力を見つける力です。「何を言うか」も大切ですが、それ以上に「誰が言うか」が重要になります。日頃から、自ら開き、人を引き付ける魅力を身につけましょう。かといっていろいろな事案を抱え込むことなく、皆で解決していく姿勢もとても大事です。皆さん、頑張っていきましょう。

 

<参加者の感想>

 

○今、学生が実習しています。人が新たに行動を起こす理由を考えながら、学生が患者と関わる時に、患者の行動を起こすための指導を考えました。明日の指導に活かせるポイントがわかりました。

 

○日々支援を行っていますので、とてもよい勉強になります。対象者に寄り添うこと、今一度できているのか見直したいと思います。「人間力」大切ですね。感動を与えられる支援を目指します!!

 

○人が新たに行動を起こすという話では、自分のダイエット行動が頭に浮かんできました。納得です。心を揺さぶる健康支援ができるようになりたいなと思いました。日常生活が訓練の場になるのかなと思います。

 

○日頃自分がやっている健康支援を考える時間となりました。「心を揺さぶる・・・」心を揺さぶっているか?と問われると、ウ~~~となります。これからも、知識の一方的な伝達で終わらないよう、自己のコミュニケーション能力、人間力を磨く事、肝に銘じます。

 

○“奥さんがこういう状況だったらどう思う”というアプローチの仕方が目からウロコでした。自分が言われたらとても心を揺さぶられると思います。どんなに数値が悪くても動じない人、保健指導の現場でよーくいます。早速その技を使わせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

 

○健康支援は日々関係することなので、改めてポイントがわかりました。あらためて保健指導を考える時間になりました。ありがとうございました。

 

○心を揺さぶる健康支援のヒントでは「感動した」という人が行動を起こす要因に、はっとさせられました。これ、とても大事だなあと思いました。そして対象の方の価値を大切に、明日控えている訪問に活かしたいと思います。

 

○途中からの参加となってしまい、保健指導の話が詳しく聴けず残念でした。行動変容の為の4項目、勉強になりました。また次回を楽しみにしています。

 

○ロールプレイを通して、自分自身のこれまでの指導や自分の特性を見つめなおす機会となりました。また江藤先生の講義を通して、大切なポイントをまとめて頂き、今後の学生指導につなげたいと思いました。

 

○ペアを組んで肝機能が異常値に困るAさんと保健師の役をしてみて、人の心を動かすのは難しいと感じたし、じぶんにもっと知識が欲しいと感じた。しかしそのような知識だけでなく、クライアントが自身を客観的に見つめられるように指導するのが上手な意見を聞いてとても感心した。自分もそんな保健指導がしたいと思った。

 

○今回「心を揺さぶる健診支援のヒント」ということで、どういう保健指導・健康支援を行うと対象の方の心をゆさぶることができるのかがよくつかめたように感じた。人の心を動かすことは難しいが、その人の大切なものをその人自身の立場であったらと考えることで自分の今の状態がどれほど危険なものであるのかを理解できるのだと知ることができて、とても勉強になった。今後自分でも用いていきたいと思った。

 

○今日は「心を揺さぶる健診支援」ということで、人が新たに行動を起こすために必要なことなどを学んだ。5つの項目があげられたが、私自身が新たな行動を起こそうとしたときのことを思い返すと、すべて当てはまっていて「なるほど」と納得できた。

 

私自身が江藤先生の話を聞き、新しい知識を得て、自分もこれから「こんな保健師になりたい」を描くことができ、今からでも自分の生活に取り入れられそうだと感じました。だから早速、今日学んだことを実践しようという気持ちになりました。本当に聞けて良かったです。私自身が心を揺さぶられました。ぜひまた参加したいと思います。私も江藤先生のように説得力のある話し方ができる人になりたいです。

 

○看護・健康支援のための考え方「相手のために」って、私の中で腑に落ちないところがありましたが、今回の講義を受けて「相手の将来・未来を少しでも本人が望むように歩めるお手伝いをする。そうすることで社会も活性化して少しでも明るい世界にしたい」という自分で考えた考え方がムクムクと浮かび上がってきました。様々なケースがありますが、高齢者の人々には人生の先輩として労いの気持ちと、未来に希望を抱けるような支援、回復が望める人や発達している人にはどんどん向上して世界を広げていけるような支援をしていきたいと思いました。そういう風に考えると、今後の勉強も貪欲に吸収していけそうです。おしゃべりするのは苦手ですが、自分の中にある情熱を発見したので、コミュニケーション術を上げて支援していきたいです。

 

 

「内観~現場に活かせる人間力を高めるヒント」

           宮崎県立看護大学 江藤敏治教授 平成281215日(木)

        

 今回は保健指導を「内観から紐解く」と題して保健指導セミナーを開催します。保健指導のポイントとして、①本人が現状を理解②何が必要かを理解③何ができるかを理解④何が大切かを理解の4つが考えられます。この項目の内①~③に関しては、各種データや生活環境を基に必然性を持ってクライアントに伝える内容となります。

 

対照的に④「何が大切か」においては本人の価値観を如何に理解するかがキーワードとなります。特に、その理解は我々支援者のみならず「クライアント本人」にも及び、時にそのことがこれまでの人生を踏まえてこじれていることも少なからずあります。このこじれは自己否定感からくることも多く幼少時からの愛着形成不全をベースにおいていることも多々あります。特に強固な自己否定の感情は行動変容においては強く負の影響を与えます。

 

 自己否定感を改善し、クライアント自身が「自分を大切な存在だと感じることができるかどうか」が行動変容には大きくかかわってきます。この自己肯定感を持たせることが出来るような保健指導のポイントは、過去の記憶にうずもれているクライアントの大切な「事象」を呼び起こし、認識できる状態にできるかどうかにかかっています。

 

 自分のこれまでの事象を振り返る方法の一つに内観があります。母親や父親など、身近な人を対象に期間を絞り「してもらったこと」「してあげたこと」「迷惑をかけたこと」を振り返ります。その振り返りの過程において自分と他者の関係性や自分の内面を見つめ、いかに大切な自分、他者の存在に気づくことが出来るか大切な時間となります。

 

 以上の内観の効果として自分自身をそのまま認めることが出来るようになるため①情緒が安定する②思いやりが出て来る③責任感が強くなる④対人関係が好転する⑤意欲が向上する⑥自分の可能性や使命感に気づく⑦種々の心の問題が解決するなどが分かってきています。この内観を保健指導の一部に取り入れる、もしくはこの概念を包括した保健指導がクライアントの行動変容を支える一つのキーワードとなることと考えられます。

 

 

参加者の感想>

 

○「保健指導のポイント」をそれぞれ挙げていったが、人の数ほどそれはあって、一言でまとめるのは難しいと感じた。しかし今日内観して思ったのが、自分の心が安定していること、医療者自身が自分を大切にできていることが土台になることを実感した。とても大切な、でもなかなか受けることのできない内容の有意義なレクチャーでした。受講してよかったです。

 

○保健指導を行う上で、おさえておかなければならないこともありますが、まずは相手が自らの存在を肯定すること、大切にすることが重要なのだと感じた。それがあって初めて自分のために今取り組んでいこうと思えるのだと思った。自分が考えていなかった様々なことを知ることができたので、今後用いていきたい。内観を時々行うのもよいと思った。暖かい気持ちになりました。

 

○内観したことで、母親の自分に対する愛情を再確認しました。いつも私や妹のことを一番に考えてくれたこと、食べ物や洋服など手作りしてくれていたこと、将来のことを考えて色んなことを経験させてくれたこと、そのようなことが今の自分の基礎となっていることがよくわります。近頃「両親のために・・・」と考えることが多いですが、改めてそういう感情が起きるようになったのは、母や父が子供のころに注いでくれた愛情の分なのだと思いました。母のしてくれたことを思い出して、場面場面の映像が浮かんできました。

 

○自分は何のために存在するのか、自分はどれだけ大切にされているか、といった心の拠り所や基盤となるものがあるからこそ、普段の生活を送ることができているのであって決して当たり前な事ではないのだと思った。ここが明確でないから健康意識が薄れたり、また身体にも影響を与えるのではないかなと思った。たまには自分と周りの人について思い起こす機会を作っていきたいと思いました。

 

○内観を行ってみて、母親が自分にしてくれていたことを実感することができ心が温まりました。また自分がしてあげたことは手紙を書いたくらいだったけど、母親がそれを大切にとってくれていることが先日わかり、そのことを思い出して愛されていたんだなと感じました。自分に対するまわりからの愛を感じることで、自分をもっと大切にしようとか、努力しようとかいう意欲が沸きました。

 

○内観療法を実際にしてみて、手、父など色々な事象で行ってみようと思いました。他の人の立場で振り返る・・・とありましたが、実際に尋ねてみる(よい関係がもてるように)話が弾むと思います。

 

保健指導のポイントと同じで、内観するときも、自分の向き合い方、環境次第で浅くも深くもなると思いました。

 

昔のことがこんなに思い出しづらかったことに驚きでした。いろんなことをしてもらい、迷惑をかけたはずなのに、思い出せたことはこんなことかと思うと、母に申し訳なく思いました。

 

内観療法について話を聞き、人には基本的な信頼感や、人生への意欲、自他を受容できるということが大切だと改めてわかった。私自身も内観を行うことで人生をより良いものにすることができると感じ、今日のセミナーを受けてよかったと思えた。他人の行動や認識を変えることは簡単ではないけど、自分にも相手にも信頼感を持つことが大切ということが一番印象に残った。

 

○内観療法を実際に体験することができ、自分が愛情をもって育まれてきたことを改めて実感することができ、自分の存在価値を認めることができた。

 

○保健指導をする上で、本人が自分を大切な存在だと感じられるかどうかが大切だと先生から話があったが、まずは支援者自身がそのことを感じていることが重要だとわかった。

 

○自分自身の過去を振り返るという経験はあまりしていなかったのですが、今回の講義で少し内観を経験して、自分自身だけでなく、周りの人の気持ちも感じることができました。なんだかほっこり、しんみりし、慌ただしい自分が落ち着けたような気がします。こんな感情、素敵ですね。これからまず自分で取り組んで体験し、誰かに伝えられたらと思います、ありがとうございました。

 

○時々、自分の人生を振り返ることで意味づけを行い、また新たな活力が沸いてくる感じを受けました。久しぶりに内観をして、心が温かくなりました。ありがとうございました。宮崎でどこかで内観をできるところがあるのでしょうか。

 

○定期的に内観することで自己が安定し、他者に対しても余裕が出てきて、自己のストレスなどが軽減されるというよい循環が生まれるのではないかと感じた。

「効果的なプレゼンの仕方」    宮崎県立看護大学 江藤敏治教授

 

平成29年2月16日

 

 

 このように医療関係者が健康啓発活動をするうえで効果的な健康教育やプレゼン方法を学ぶことはとても重要だと考えています。健康教育には個人指導、集団指導、ポスターやメディアを通したものなどが考えられますが、皆さんの保健指導の目標は何でしょうか?クライアントの方に健康ん位過ごしてもらうことでしょうか?いわゆる「健康至上主義」は最高なのでしょうか?

 

 僕は従来の保健指導の落とし穴はここにあると考えています。人は「健康」は当たり前のことと考えていることが多いです。損なって初めて気づく人も多いでしょう。何か行動を起こす際にその中心となるものはその人の価値観です。いくら血液検査データが気になる人でも、「あの人からの誘い」は断れないとか、我々がこうしたほうがいいという言葉もクライアントの琴線に触れなければ届きません。

 

 以上のことから、保健指導の重要なキーワードはクライアントに対して「より良い人生を過ごしてもらう」もっと解釈すれば「本人が望む、考えうる、より良い人生を過ごしてもらうための」支援だということです。

 

 そのためには、本にを理解し、本人の価値観に寄り添い、また寄り添っているとクライアントが理解できる支援を展開することが重要となってきます。人は「EBM」だけでは動きません。「NBM」が加わってこそ人は動きます。

 

 

【 参加者の感想 】

 

○何のために保健指導するのか、どのような支援をすればいいのかということを学びました。否定しないことや理解することを大切にして、また受けたいと思ってもらえるような支援ができる看護職者になっていきたいと思いました。

 

○江藤先生の講義では、保健指導の時のみならず、日常のコミュニケーションを振り返るきっかけとなりました。「正の感情を残す」の言葉が印象に残りました。次年度以降もとても楽しそうな企画で、期待しています。

 

○健康教育のプレゼン法は楽しみにしていた話でした。やはり聞いてよかったです。今までやってきて、これでよかったのだという確認、こうすればいいんだという新たな発見などいろいろありました。

 

次年度以降のこの講義、毎回参加は難しいと思いますが、できるだけ参加したいです。出張セミナーも期待しています。ありがとうございました。

 

○健康教育もひとつひとつの振りかえりになり楽しかったです。

 一年間、お疲れ様でした。29年度からも期待しています。

 

○その人の琴線に触れるには?「その人が大切にしていること」!!納得できる内容でした。来年度は、統計に関する研究をやりたいと思っています。学びを活かせるようがんばりたいと思います。

 

 ○患者さんへの指導というより、支援という考えで接していくことが患者さんへのプレッシャーや反発にならないということを感じた。否定されないこと、共感されること、理解してもらえていると感じてもらうことは、患者さんが心を開くことに大切なのだと思った。そのような接し方を実際に出来るといいなと思う。